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2007年11月14日 (水)

日司連「東京地裁に対する株式会社クレディアの民事再生手続に関する要望書」

東京地方裁判所民事20部 御中

                                     平成19年11月12日 

                                日本司法書士会連合会

             株式会社クレディアの民事再生手続に関する要望書

 時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
 標記の件について、当連合会は次のとおり要望いたします。

                      要 望 事 項

1.株式会社クレディアの民事再生手続(東京地裁平成19年(再)第169号)(以下「本
件民事再生手続」という。)について、再生債務者クレディア等に対し、下記の事項を要
請されること。
(1)再生債務者クレディアは、全顧客(再生手続開始決定前10年以内に取引を終了した利用者を含む)の取引を利息制限法により引き直し計算し、過払いが生じている利用者に対しては、債権届出書を送付する等、民事再生手続に参加する機会を保障すること。
(2)再生債務者クレディアは、債権の帰属先が再生債務者クレディアではない顧客に対し、債権の帰属先を明らかにし、債権帰属者に対し、貸金業の規制等に関する法律第24条第2項に定める通知をするよう求めること。
(3)再生債務者クレディアは、利用者若しくはその代理人からの取引履歴開示請求に対し、その帰属先も含め、速やかに開示すること。
(4)再生債務者クレディアは、再生計画案において、少額債権についての弁済許可の申立をする等、利用者の過払債権が早期に弁済を受けるよう適切な措置を講ずること。

                       理   由

 本年9月21日東京地方裁判所において、株式会社クレディア(以下「クレディア」という)の民事再生手続開始決定(平成19年(再)第169号)がなされた。
 クレディアは、日本全国に顧客を持つ、上場している貸金業者であり、クレディアから開示された情報によるとその口座数は16万4,721口座(本年9月末日現在)ということである。現在、全国の司法書士会が主催する相談会においても数多くの相談が寄せられている。
 司法書士は「国民の権利の保護に寄与することを目的とする(司法書士法第2条)」ことがその職責であり、当連合会は、全国の司法書士会と連携して利用者の権利擁護のためにこの問題に全力で取り組んでいる。
 さて、クレディアの民事再生手続きには下記で述べるとおりいくつかの重大な問題点が存在することが明らかとなってきた。全国的に貸金業者の経営が逼迫する中、クレディアのように全国に多くの顧客を持つ貸金業者の倒産は、今後も続く可能性がある。クレディアの民事再生手続きは、後述する「見なし弁済」を否定する最高裁判決後のリーディングケースとして非常に重要な意味を持つものと思われる。今回の民事再生手続きが以下の問題点を置き去りにしたまま進行すると、今後のケースにも同様の処理がなされる可能性があり、顧客の混乱が続くことは容易に想像できる。その点を配慮したうえで、速やかに対処されることを要望する。

第1 利息制限法による引き直し計算を行わないことから生ずる問題
(1)過払債権者の手続き参加機会の保障について
 平成18年1月13日最高裁判決(第二小法廷、平成16年(受)第1518号)は、「期限の利益喪失特約の下で、債務者が、利息として、利息制限法の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできない」として、貸金業規制法第43条の所謂みなし弁済規定の適用を否定した。この判例は過去積み重ねられてきた判例の一つの到達点といえる。そして、クレディアとその顧客との取引にもこの最高裁判決が該当すると考えられる。
 静岡県司法書士会が行った本年9月16日、9月17日の相談会の結果によると、クレディアとの取引期間が5年を超えるものが44%を占め、これらの相談者は利息制限法による引き直し計算をすればクレディアに対する過払い債権者である可能性が高いと考えられる。仮に、顧客16万4,721人の4割が過払い債権者だとすれば、約6万5,000人の過払い債権者が存在することになる。また、クレディアは、既に取引を終了している顧客約60万人を把握しているとも述べているが、これらのほとんどは過払い債権者であると推定される。したがって、過払債権者は全国で70万人近くに及ぶことになる。ところが、クレディアが東京地方裁判所に提出した債権者一覧表に記載された過払い債権者はわずか3,000名弱であり、推定過払い債権者の1パーセントにも満たないものであった。
 本年9月20日にクレディアが開催した説明会の説明によれば、顧客との全取引を利息制限法により引き直し計算することは事実上不可能なため、顧客からの請求を待って債権者として扱う予定とのことであった。
 しかし、クレディアは現在、顧客からの取引履歴開示請求に対して利息制限法による引き直し計算後の取引履歴を返送している。つまり少なくとも個々の顧客との取引についての引き直し計算は可能であることは確かである。このことから多少の時間さえかければ取引終了後の顧客を含めた全顧客に対する引き直し計算は可能であることは明らかである。
 したがって、クレディアの姿勢は、手続きの公正性、妥当性の面から極めて不当なものだと考えざるを得ない。
 クレディアの民事再生申立は、利息制限法制限利率を超過する利率による利息の過払金の返還が原因の一つであるとされているが、クレディア自身は、貸付債権に利息制限法が適用されることを認識したうえで営業を続け、過払金返還に備えるために引当金も計上してきた。したがって、過払い債権者となる顧客についてはクレディアにおいて知り得ている債権者にほかならない。
 民事再生法第35条では、「知れたる債権者」への送達が定められている。この「知れたる債権者」には、債権の存否が争われている債権者も含まれると解すべきであるとされている。
 潜在的過払い債権者(自らの過払い債権を認識していない債権者)は、債権の存否を争っているわけではないが、既述の最高裁判決から考えれば債権者の可能性が高い者となるので、「債権の存否が争われている債権者」と同様に考えることも可能である。
したがって、クレディアが全顧客との取引を利息制限法により引き直し計算して過払い債権者に対して債権届を促すことをしない限り、本件民事再生手続に大きな瑕疵が存在することになる。
 仮に、クレディア自身が顧客との取引を引き直して計算を行わない場合には、多くの過払い債権者が本件民事再生手続に参加する機会を喪失してしまうことになり、このままでは大多数の債権者を、事実上再生手続から排除するに等しく、極めて不合理な結果を招くことになる。

(2)財産の価額の評定について
 民事再生手続は、再生債務者の債務・資産を確定した上で債権者によって再生計画案の遂行可能性が判断され、再生計画案の決議・認可・遂行がなされることになるが、当然資産価額の評定は公正な手続き・方法によって行われることが前提となる。資産価額の評定に公正さを欠けば、それをもとに立案された再生計画案も不公正なものとなることは明らかである。
 クレディアが有する貸付債権についても、民事再生手続において価額を評定する必要がある(民事再生法第124条)が、そのためには全顧客との取引につき利息制限法により引き直し計算を行うことが必要不可欠であるといえる。
全顧客との取引につき利息制限法による引き直し計算を行わずに民事再生手続が進行するとすれば、前記最高裁判例を骨抜きにすることになると言っても過言ではない。

 以上のことから利息制限法による引き直し計算は、クレディアの公正な債務・財産価額の確定のために必要であり、時間がかかる・事務処理が煩雑になる等の理由によって省略できる性質の問題ではなく、民事再生手続きの本質に関わる問題だと考えられる。

第2 新生信託銀行に対して信託された債権についての問題点
 クレディアからの情報開示によると、クレディアは顧客に対する債権について、252億2,166万3,123円(本年8月末)を新生信託銀行に信託を原因として債権譲渡している。ところが、信託譲渡された債権について顧客に対して貸金業の規制等に関する法律第24条第2項に定める通知がなされないまま、クレディアが譲渡以前と同様に顧客からの債権回収業務を行ってきているので、顧客は自らの債権者(過払いの場合は債務者)が、クレディアであるのか新生信託銀行であるのかを認識することができない。したがって、債権届出を提出すべきか否かの判断もできない。
 このような現状では、クレディアの債務を確定することが不可能であり、公平を期すべき民事再生の手続きとして問題であると考える。そこで、債権の帰属先から前記の通知がなされる必要があると考える。

 冒頭で述べたとおりクレディアの民事再生手続は大規模な貸金業者の倒産手続におけるリーディングケースとして非常に重要な意味を持ち、本件において不当な手続きのまま手続きが終了してしまえば、次回の倒産手続も同じような問題点を抱えたまま手続きがなされる可能性が否定できず、そのような事態になれば、不当な倒産手続が恒久化することになってしまう。
 そこで、当連合会は本件民事再生手続が公正に行われるよう、冒頭のとおり要望する。

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