« 国家権力の反乱 | トップページ | ベスト・オブ・ジョニー・キャッシュ TVショー »

2008年3月31日 (月)

司法書士の広告に思う②

 このブログにこんなテーマの記事を書いたからかどうか知りませんが、その後、2つの象徴的な出来事に遭遇しました。いずれも債務整理に関することです。

 一つ目は、東京のある司法書士事務所のカラー広告が、静岡県内の新聞の折込チラシとして配布され、私の自宅にも、静岡県司法書士会の会員の自宅にも届いたことです。

 その立派な広告を見て、いったい広告費用はどのくらいかかるのだろうかとも思ったわけですが、それよりも何よりも、東京の司法書士事務所が、静岡市の依頼人に対して、どのように手続を進めていくのだろうかという疑問を持ちました。

 言うまでもなく、依頼人と司法書士との委任契約は、信頼関係を基礎としております。債務整理事件が半年以上、場合によっては1年以上要することもあるわけで、その間、何度も依頼人と協議をし、債務整理の方向性を決定し遂行していくというのが一般的であろうと思われます。とすれば、依頼人は何度も東京の事務所へ足を運ぶ必要があります。その負担をどう考えているのでしょうか。まさか、電話やメールのみで事件を進めて行こうと考えているのでしょうか。東京司法書士会においては、司法書士が面談をしないで行う債務整理は規則違反ということになっているとも聞いていますから、そのようなことは無いはずです。いずれにせよ、債務整理について、依頼人と会わずに委任契約など、私には全く考えられないことです。

 二つ目は、地元の話です。債務整理を広告に謳ったある司法書士事務所に行き、受任を断られたにも関わらず、相談料はしっかり取られたと嘆く依頼人の事件を受任したことです。

 私が面談をしたところ、その方はおそらく自己破産せざるを得ない状況にありますが、法律扶助を利用することは可能ですし、費用も低廉で済むだろうと考えています。しかし、その司法書士事務所は、なぜか、受任を拒否し、特に有益と思われるアドバイスも無かったにも関わらず相談料をしっかり領収しておりました。自身が対応不可能であれば、他の司法書士事務所を紹介するということさえせずに・・・もちろん、相談を受けたのは事実ですから、相談料は取って当然という考え方もあるかもしれません。しかし、その依頼人は、無職であり、障害をお持ちであったこともあり、その日の生活費にも事欠いているような状況であったのですから、5000円の相談料を払ったことは大きな出費だったことでしょう。なぜ、そのようなことを考えてあげることができないのでしょうか。

 金融庁は、多重債務者相談ウィークの実施にあたり、特に費用については留意事項として、次のような趣旨のことを全国の弁護士・司法書士にお願いしています。

1.なるべく特定調停を薦めて費用負担の少なくなるようなアドバイスをしてください。

2.費用については分割をベースとして、低廉に抑えるようにしてください。

 私はこの趣旨に全く賛成であり、日司連においても、全国の司法書士の皆様に、この趣旨をお伝えし、協力をお願いしたところであります。

 さて、私の考えを述べます。

 まず、一つ目の事例に関してですが、まず、『依頼人と直接お会いできない債務整理事件は受任することがありません』、次に、『依頼人の交通費等の負担が大きい事案は、依頼人が本当に強く望まない限り、最寄の債務整理に強い司法書士を紹介します』。従いまして、県外の依頼人の事件を受任することは、極めて特殊な事情のある場合以外まずあり得ませんし、県外の依頼人の受任を前提とするような広告もあり得ません。HPとブログは、受任を目的としたものではなく、広く多くの方へ、債務整理などに関する法的情報を提供するためのものであります。

 二つ目の事例に関しては、まず『債務整理に関する法律相談は全て無料でやっています』。これは、この問題に取り組むようになった平成3年からずっとそのようにしています。次に『事案が、破産であっても、再生であっても、ヤミ金融であっても、利益相反などの特殊な事情がない限り受任します』。これもずっとそういう姿勢でやってきましたし、当たり前すぎるくらい当たり前のことでしょう。そして、『特殊な事情により受任が出来ない場合には、この問題に強い真面目な司法書士を必ず紹介します』。もちろん無料で。これも当たり前のことだと思っています。債務整理を扱うことを広告に出しながら、上記のような対応をするのは、厳しい言葉かもしれませんが、詐欺的とも言えるのではないでしょうか。

 最後に。

 このブログでも繰り返し述べているところであり、研修会でも述べさせていただいているところですが、「債務整理」の分野ほど、法改正や判例の積み重ねが激しい分野はなく、日々の研鑽が常に求められている分野であります。私は、10年以上前から、そうした研修会の主催に回る機会が多いわけですが、総じて言えることは、こうした研修に熱心な司法書士は、まず広告を打たない、逆に言えば、研修にあまり参加していない方々が広告に積極的であるということです。また、司法書士会が主催するクレサラ110番などの無料相談会についても同様のことが言えます。

 債務整理を扱うということを広告で謳うのであれば、それに見合った研鑽をするのは専門家として当然のことでありましょう。そして、登記業務とは異なり、依頼人の全人格と向かい合わなければならない局面も少なくない、この債務整理という分野に取り組むということの重みを理解しなければなりません。決して一朝一夕に身につくような簡単なことではないのです。

 より、具体的に述べれば、債務整理を扱うということを広告で謳うのであれば、少なくとも次のような姿勢を持つべき・・・というのが私見です。

1.研修会には積極的に参加し、自らも能動的に日々研鑽に務めること。

2.110番などの公益的活動にも積極的に参加し、労を惜しまないこと。

3.ヤミ金融事件も積極的に受任すること(事件を選ばないこと)。

4.依頼人の費用負担の軽減に努め、分割払いを基本とし、法律扶助の積極的活用をすること。

 まだまだありますが、最低限ということで。

|

« 国家権力の反乱 | トップページ | ベスト・オブ・ジョニー・キャッシュ TVショー »

コメント

いつも精力的な活動をされていることをブログで拝見しております。
そのような貴兄が憤られるのはわかりますが、司法書士会としては何かできないのでしょうか?

弁護士もそうですが、先日も(日曜日)テレビで田原総一郎が、大阪のK先生や仙台のN先生との討論のなかで「債務整理をして弁護士が儲かっている」との発言をされていました。

実際にテレビでは、過払い成金弁護士を公言する先生もいる始末です。
同じ士業でも金融庁の監督下にある公認会計士は、厳しい処分を受けているのに、不祥事を起こしても弁護士会は知らない振りしていると会計関係者は怒っています。

私的自治を守るためにもルール違反の司法書士を排除するよう会としても対応策を講じるべきではないのでしょうか?

えらそうに申しましたが、いろいろ考えておられるとは思いますので、お教えください。

投稿: いつも拝見しています | 2008年4月 2日 (水) 14時21分

コメントありがとうございます。色々と考えてはいるのですが、私の能力的限界から、なかなか・・・(汗)とてもここで公表できるような段階ではありません。しかし、真剣に議論は進めて行きたいと考えております。是非、お知恵をお貸しください・・・・

投稿: 小澤吉徳 | 2008年4月 2日 (水) 20時45分

同感!!! 会がやらないのなら個人でやるしかないか! 人生、いつなにがあるかわからないから、今やれることは、自分を信じてやっておこう。ね、天国の田中さん。

投稿: ふるふる | 2008年4月 6日 (日) 22時00分

愛知県では、行政担当者が、司法書士・弁護士の評価をしているそうですね。面白いと思いました。
また、「債務整理トラブル110番」を企画したいなあと思っています。

投稿: 小澤吉徳 | 2008年4月 7日 (月) 14時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/106839/40657348

この記事へのトラックバック一覧です: 司法書士の広告に思う②:

« 国家権力の反乱 | トップページ | ベスト・オブ・ジョニー・キャッシュ TVショー »