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2008年11月 1日 (土)

日司連創立80周年記念式典

 会長会終了後、そのまま赤坂へ・・・

 標記式典に先立って行われたシンポジウムに参加してまいりました。記念式典及び懇親会につきましては残念ながら参加できませんでした。

 基調講演の和田仁孝先生の講義、「変容する法律家像:応答的専門性の構築へ向けて」は、市民の法的需要に応えるべく、司法書士も変わっていかなければならない・・という点につき、多くの示唆に富むものでありました。

 2005年に執筆した、実践簡裁民事訴訟(民事法研究会)においても、和田先生のご意見等を参考にさせていただき、次のように記したことを思い出しました。引き続き自己研鑽を積まなければなりません・・・・(汗)

 少々長いですが・・・・ご参考まで・・・

 受任にあたっての手続き選択について~より満足度の高い紛争解決の担い手を目指して~

 これまで述べてきたとおり、司法書士が、各種の紛争に対して選択できるメニューは、代理による訴訟のほか、代理による裁判外の示談交渉、代理による民事調停などに加えADR・仲裁等が存在することとなる。
 紛争の類型が同じでも、それぞれの事案によって、選択すべきメニューは異なることも少なくないと思われるので、ここでは、受任にあたっての手続き選択について、紛争の類型ごとではなく、依頼人の様々なニーズという視点からアプローチしてみることにしたい。
 なお、既述のとおり、本書は、簡易裁判所における民事訴訟手続きに焦点を絞ったものであるので、それ以外の手続きを含めた体系的な実務手引書に関しては、今後の実務実績の推移を踏まえたうえでの今後の検討課題とさせていただきたい。

①依頼人の効率性ニーズから考える
 依頼人にとってみれば、自身の紛争が早期に効率的に解決が図られること、これは最大の関心事であろう。
 一方、国の側からみても、国民の権利意識の高まりにより、次第に増加している紛争を効率的に処理する必要性は大きい。たとえば、上手に紛争をADRにも振りわけ、訴訟が重要な事案に専念できるようにすること、大量の紛争処理ニーズにより簡易・迅速に応答できるようにすることがニーズとされてきていると考えられる。
 ところで、ここで言う依頼人にとっての効率性とは、主として、簡易性と迅速性ということになると思われるので、その2点から、各種の手続きを比較検討してみることとする。
 まず簡易性であるが、そもそも簡易裁判所における訴訟手続きは、地方裁判所のそれと比較し、多くの特則により、簡易なものとされている。しかしながら、簡易とはいえ、裁判手続きであることから、証拠の必要性等、利用者から見れば決して軽い手続きとは言えない側面もある。
 一方、民事調停手続きは、訴訟手続きと比較すれば、厳格な手続きが要求されていないという点に限っても敷居が低い手続きであると言える。さらに言えば、調停手続きは、当事者双方の自由意思による合意で自主的に紛争を解決する方法であり、訴訟にように特定の権利や法律関係に限定されず、柔軟な解決が可能になる。この点については、ADRによれば、より一層柔軟な解決が図られる余地があると考えられる。
 ただし、正義の浸透という点については、訴訟手続が、厳格なだけ実現可能性は高いと言えるかもしれないし、強制力の有無について訴訟手続きに優位性があるのは明らかである。
 次に、迅速性であるが、司法統計によれば、簡易裁判所における民事訴訟手続きの審理期間は、二ヶ月程度のものが最も多い。総数347851件のうち、一月以内に終局しているものが、55977件、二月以内に終局しているものが、186665件、三月以内に終局しているものが、64767件、四月以内に終局しているものが、32612件、五月以内に終局しているものが、6675件となっている。
 一方、民事調停においても、司法統計によれば、審理期間は、二ヶ月程度のものが最も多い。総数484081件のうち、一月以内に終局しているものが、65551件、二月以内に終局しているものが、226526件、三月以内に終局しているものが、116436件、四月以内に終局しているものが、66571件、五月以内に終局しているものが、7362件となっている。このように見ていくと、審理期間については、訴訟手続きも調停手続きもそれほどの差異は無いといえる。
 したがって、仮に、ADRや仲裁などの他の手続きが、一月以内に紛争を解決することが可能であれば、利用者にとっては大きなメリットとなり、多くの需要を持つようになる可能性を秘めているとも考えられよう。

②依頼人の専門性ニーズから考える
 科学技術等の高度発展により、いわばオールマイティである裁判制度では対応しきれない紛争類型もあると言われており、より専門的な観点からの処理をスムーズかつ的確に行う必要性がこの専門性ニーズと言われている。典型例として、特許訴訟、欠陥住宅に関する訴訟、医療訴訟などがあげられよう。
 一般に、簡易裁判所における民事事件は、いわゆる市民紛争型について簡易で迅速に解決されることに主眼が置かれている点から、基本的には、上記のような訴訟類型の事件が取り扱われることは圧倒的に少ない。
 特許訴訟や医療訴訟などの分野に関して、裁判所が依頼人の専門性ニーズに応えようとする試みなども、地方裁判所において行われているものである。
 しかしながら、だからといって、法律家である司法書士が、依頼人の専門性ニーズに応えることが出来ないということは許されるべきではいのは当然である。
 また、訴額が少額であることが、その紛争解決にあたって高度な専門性を有するか否かを決定するものではないことは明らかであり、本書に収められている訴訟類型に限っても高度な専門性は要求されている。
 依頼人が、法律専門職に要求する最大のもの、それは高度な専門性であり、弁護士等の隣接職能団体と比較して劣るようなことがあってはならない。
 そのように考えれば、依頼人の専門性ニーズは、司法書士にとって、あらゆる事案に常に求められるものであり、専門家としては当然に有していなければならない前提であるから、手続選択において考慮すべき問題ではなく、個々の司法書士の自己研鑽の問題と言える。

③依頼人の日常性ニーズから考える
 日常性ニーズとは、法システムでは対応できないような感情的な問題や人間関係的な問題などに対する応答についての必要性と言われている。
 つまり、これまでであれば、企業や地域社会、家族親族のネットワークなどの共同的な社会関係の中で解消されてきた紛争が、共同体の崩壊・希薄化によって法律家の前に現れてくるようになっている現状に対して、法律家がどのように対処すべきかという問題である。
 例えば、医療の世界を考えてみても、これまでは、専門知識に基づいて病気を治すのが仕事であったわけだが、近時では、高齢者のケアやホスピスでのケア、生活習慣病への対応などが当然とされ、医学部のカリキュラムにも患者とのコミュニケーション・スキルが組み込まれているのである。
 この点については、やはり、訴訟手続きと比較して、紛争処理の過程で何を扱うか、どのようにプロセスを構成するか、どういう解決を創り上げるかについての自由度が高く、様々な形で設計できる点において、ADRに優位性があるものと考えられよう。
 一般に、相隣による紛争や親族間の紛争といったような、感情的な問題や人間関係的な問題が大きく関係しており、また、将来にわたって関係を維持しなければならない者の間で起こった紛争について、利用価値が高いと言われるADRであるが、今後の実績の積み重ねに期待したいところである。

④依頼人の透明性ニーズから考える
 「透明性」という概念は、広義には、これまでの行政主導型の不透明な秩序構築の過程を、国民が司法を通じて明瞭化し、自律的な秩序形成の担い手としての役割を果たしていくという次元で考えられているが、依頼人の視点に立てば、法律家が内部で専断的に問題処理をしているという点に不透明さを感じているという事実があり、これに対するニーズにもきちんと応えていく必要がある。
 例えば、既存の訴訟手続きや民事調停手続きにおいても、依頼人を同行し、その過程を体感してもらうことによってもこのニーズに応えることは可能である。
 さらに、必ずしも法に縛られることのない、より柔軟な手続運用を設計できるADRによれば、より分かりやすい透明性の高い紛争解決として、このニーズに応えていくことも可能であろう。

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